第10回 ラボキッズ編集部員座談会「親としてできること〜その子が一番幸せに生きられるように〜」

LABO  KIDS サロン


プログラミング教育のこと、専門家の方にうかがいました。


「プログラミング教育って必要なの?」「家庭でできることってあるの?」家庭での子どもの教育に悩むお母さんやお父さんのかわりに、LABOKIDS編集部が専門家の方々にお話をお聞きする「LABOKIDSサロン」。

第10回は、ここまで9回のインタビューについて振り返りながら、あらためてプログラミング教育のこと、家庭での教育や親子の関係など、母親でもあるLABO KIDS編集部の平山・立花・小室の3人が座談会形式で話してみました。子育てのヒントにつながれば幸いです。

 

第10回 ラボキッズ編集部員座談会
「親としてできること〜その子が一番幸せに生きられるように〜」

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ラボキッズ編集部

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プログラミング教育の今

 

平山:LABOKIDSサロンは、子育てに悩むお母さんやお父さんへ向けて、少しでも役立つ情報を発信したいという思いで手探りで始めたインタビューでした。

 

立花:第1回に日本におけるプログラミング教育の第一人者である阿部和広(あべかずひろ)先生にお話を伺えたのは、すごく良かったと思います。

 
日本の小学校でプログラミング教育が取り入れられた経緯とか、プログラミング的思考をカレー作りに例えてわかりやすく説明してくださったり、インタビューというだけなく、一人の親としてもとてもためになるお話でした。

プログラミング教育って難しいイメージでとらえてしまいがちですが、結局はその子供が生きる力を育てることに繋がるんだなってお話を聞いて思いました。

 


小室:私は宮城県の現役の小学校教諭・金洋太(こんようた)先生(第2回)のインタビューが特に印象に残っています。


金先生が学校現場の現実と理想を調和させながら、一生懸命にプログラミング教育に取り組む姿勢は非常に印象的でした。子どもたちの成長や学びについても、しっかりと考慮されています。

金先生ご自身も熱心に学び続けており、それをどのように子どもたちに最も効果的に伝えるかを工夫しながら授業を行っている姿勢が素晴らしいです。私の息子も、ぜひこんな先生に教えてもらえたらと感じました。

 

立花:2020年にうちの子の学校でプログラミング教育が始まったときには、スクラッチを始めたり、プログラミングというイメージに直接つながるような内容だったと思うんですけど、最近はiPadのこういう機能を使ってこういうことをやってみましょう、というような感じの取り組み方にちょっと変わってきました。

 

平山:うちの子は今、2年生なんですけど、課題の提出など意外とタブレットを使う機会は多いんだなという印象です。最近はタブレットにキーボードをつなげて、タイピングの練習アプリをやっていますね。1年生のときは20点が目標だったので、2年生の今は30点を目指しているようです。プログラミングについては、ほとんど取り組んでいません。

 

小室:うちの子の学校でも課題の提出とか授業中の調べ学習などは、タブレットを使ってやっているけど、プログラミングはそうでもないです。

うちの子はスクラッチが好きで「スクラッチ、やらないんですか?」って担任の先生に直接聞いたらしくて。面談のときに「プログラミングは5年生の後半からやる予定です。すいません。」って先生から言われて、恐縮したことがあります。

普通はそんな感じだと思うので、金先生の取り組みはとても印象的です。

 

 

親が整えられる環境と子供自身がもつ力

 

平山:私が印象深いのは、プログラミングコンテストで受賞歴を持つ川口明莉(かわぐちあかり)さん(第3回)です。


まさにプログラミング教育を今現在受けている小学生が来てくれて、どんなところが楽しいのかを聞けたのはとても良かったと思います。

当時、明莉(あかり)さんは5年生で、SDGsの自作アプリを作ったり(マークみっけ!for SDGs」の発表)、「たんたん!探検隊」というmicro:bitを使った棒倒しゲームを作っていました。micro:bitに備わってる全ての機能を使ったプロジェクトで、アイデアがとにかく可愛らしくて素敵でした。

お母さんである川口奈都子(かわぐちなつこ)さんのお話も印象的でした。好きなことに出会えるよう、常日頃からいろいろなものを見せたり、体験させることを意識していると話されていました。「好きなこと」というのは子供だけではなかなか見つけられないし、自分で思いつくのも大変です。親がフォローしてあげることの大切さを改めて感じました。

 

小室:でも、同じように環境を整えても、すべての子どもが明莉さんのようになるわけではないとも思いました。

例えば、同じ親に育てられた兄弟であっても、小学生になればそれぞれ異なる個性を持っています。育て方や環境だけではなく、生まれ持った個性が大きいのかなと思いますね。

だから、親がその子の持つキャラクターや資質をどれだけサポートできるか、また、その子が一番幸せに生きられるために何ができるかという視点が重要だと思います。環境を整えることに加えて、明莉さんのお母様はその視点を持ちながら、しっかりとサポートされている印象を受けました。

 

立花:同じことをロボコンの世界大会で入賞した田口大哲(たぐちひろあき)(第5回)さんのインタビューでも感じました。


田口さんは「兄弟が3人いる中で、自分だけがプログラミングやものづくりの世界にのめり込んだ」とおっしゃっていました。この話を聞いて、環境だけでなく、その子自身が持つ力も将来に関係しているのではないかと思います。

「作ったプログラムがバクばっかりで、徹夜して20時間で作り直した」という話を聞くと、そういう経験が、すごく成長に繋がるんだなって思いました。




子供の頃の体験が大事

 

平山:ロボットトイ「toio(トイオ)」を開発されたエンジニア・田中章愛(たなか あきちか)さん(第6回)の話もおもしろかったですね。「学ぶよりハマる」という言葉が特に印象に残りました。

 


小室:
そうですね。田中さんは、子どもの頃に「自分が作ったものが動く」という体験が、開発者としての原点になっているとおっしゃっていました。明莉さんや大哲さんのように今、何かに夢中になっている子どもたちが、将来田中さんのような開発者になるのかもしれませんね。

 

平山:そうですね。田中さんも、小学生の頃にモーター工作に夢中になったとお話されていました。技術者の方って、子どもの頃に感じたワクワクをよく覚えているように思います。そうした体験が、将来の考え方や興味に深く関わっていくのだろうなと感じました。

 

手作りおもちゃアーティスト・佐藤蕗(さとうふき)さん(第7回)も自分が子どもの頃に作りたかったおもちゃを今作っているとおっしゃっていました。子どものためのものを手掛ける方々にとって、そのような原体験が大きな原動力であり、大切な着想源になっているのだと感じますね。




立花:でも子供目線っていうだけじゃなくて、大人から見ても「このおもちゃ面白いな、よくできてるな」っていう作品ばっかりでしたね。

もとはデザイナーさんだからでしょうか、外観がかわいいっていう印象を作品からは受けます。母親たちが「かわいい!」ってまず感じるものが作れるのはすごいと思いました。

 

平山:さらに、作るおもちゃにはすべて「学び」や「気づき」の要素が含まれていますね。たとえば、クリアファイルを切り取り、お風呂の壁などに貼ることができる「お風呂シール」の原理は表面張力ですし、ふたを開けると水が出て、閉めると水が止まる穴の空いたペットボトル「かおボトル」の原理は大気圧です。「なぜ貼れるのか?」「水が止まるのはなぜか?」といった疑問を子どもに抱かせるおもちゃは、本当に素晴らしいと思います。

 

立花:最初から答えは示さない、ということも大事だなと思いました。遊びながら自然に身につけた疑問は、正解を知ったとき本当の学びへとつながると思いますね。蕗さんは「遊びと学びを区別しない」ともおっしゃってました。

 

 

micro:bitがリコーダーになる日

 

 

小室:これまでの9回のインタビューを通して、プログラミング教育や子育てについて、考えるきっかけを提供できたのではないかと思います。一方で、家庭でのプログラミング教育が普及していない現状も感じます。

 

立花:阿部先生もおっしゃっていましたが、親がピアノや水泳を習わせるハードルは低いけど、パソコンやプログラミングとかになるとちょっと構えちゃうというところがありますね。

 

小室:このインタビューでは、さまざまな方々がmicro:bitを使って、その魅力をいろんな視点から紹介してくれました。でも、個人的には、micro:bitが家庭で使われる前に、まず学校の授業でリコーダーみたいに当たり前に使われるようになってほしいなと思っています。

勉強で輝く子どもたち、音楽や体育で才能を発揮する子どもたちと同様に、プログラミングの分野でも輝ける子どもたちがもっと増えてほしいと願っています。




***編集後記***

 

これまでのインタビューを通じて、プログラミング教育に関して、親が子どもに何をしてあげられるかという観点でさまざまなお話を伺いました。たとえば、金先生のインタビューでは学校教育におけるプログラミング教育の取り組みについて知ることができ、佐藤蕗さんのインタビューでは親としての視点から考える非常に有意義な機会となりました。

LABOKIDSとして、今後もプログラミング教育の重要性や取り組み方を広く伝えていきたいと思います。具体的には、ウェブでのmicro:bitの販売に加えさまざまなコンテンツの提供、またMakerFaireに出展して直接子どもたちと触れ合いながら、家庭でのプログラミング教育をお手伝いできれば嬉しいです。

LABOKIDSサロンのインタビュー企画がスタートしたとき、「これ、ちゃんと続けられるかな?」と少し不安でした。しかし、編集部のメンバー全員が小学生の子どもを持つ母親であり、日々の子育てや教育の悩みを抱えながら進めていく中で、「こんな話、みんなにもぜひ聞いてもらいたい!」という気持ちがどんどん膨らんでいきました。そんな思いが自然と取材に反映され、気がつけば毎回、取材は楽しい時間になっていました。

私たち編集部にとって、このインタビュー企画は単なる記事づくりを超えた貴重な体験でした。お話を聞くたびに「なるほど!」「そうなんだ!」と感動し、勇気づけられる瞬間がたくさんありました。読者の皆さんにもそれが伝わっていたら嬉しいし、少しでも役立ててもらえるならこれ以上の喜びはありません。

まだまだ続けたい気持ちはありますが、ここでいったん一区切りとさせていただきます。最後までお読みいただき、本当に感謝しています。

そして、全10回にわたって素晴らしい記事を執筆してくださったライターの金子さんに、心からの感謝の気持ちを贈ります。毎回脱線してしゃべりすぎた取材だったにもかかわらず、要点を簡潔にまとめ、驚くべきスピードで記事を仕上げてくださいました。本当にありがとうございました!