第5回 田口大哲さんインタビュー「プログラミングで広がった自分の世界」
プログラミング教育のこと、専門家の方にうかがいました。
第5回 インタビュー
「プログラミングで広がった自分の世界」
「プログラミング教育って必要なの?」「家庭でできることってあるの?」家庭での子どもの教育に悩むお母さんやお父さんのかわりに、LABOKIDS編集部が専門家の方々にお話をお聞きする「LABOKIDSサロン」。
第5回は、
田口大哲(たぐちひろあき)さん
東京都に住む18歳(2022年現在)。
LABOKIDS編集部&ライター金子氏で、リモートにてお話を伺いました。
パソコンクラブでプログラミングにはまる
編集部:小学校のときはどんな子どもだったんですか?
田口大哲さん(以下田口さん):電子工作が大好きな子どもでした。
※ スイッチサイエンスチャンネル「このヤングメーカーがすごい」より
2016年、当時私立小学校6年生だった田口さんに、
編集部:プログラミングはいつ頃始めたんですか?
田口さん:小5のときです。パソコンクラブに入ってScratchでスーパーマリオみたいなゲームを作っていました。ただそのときはスクロールの方法がわからなくて。でもScratchにはコミュニティーがあって、人が作った作品のコードが公開されているので、それを見て学びました。自分の作品に他人のアイデアやノウハウを組みこむ最初の体験になりました。他の人のコードを見て学ぶことの大切さを知りました。
編集部:小学校のときに習い事とかはしましたか?
田口さん:小4までは、公文、体操、水泳などいろいろやっていましたね。習い事のスケジュールで1週間が埋まってしまうほどでした。小4で家を引っ越したときにいったん全部やめてしまいました。その後は夏休みなどを利用してロボット教室などに通いました。この時期は、学校のパソコンクラブを含め、プログラミングにはまっていましたね。中学校では、プログラミングと電子工作を組み合わせて作品を作ったりしてました。
プログラミングの魅力は簡単に試行錯誤できるところですね。最初から完璧には作れなくて最初はバグだらけでできあがるんですけど、そこから試行錯誤して修正していくのが好きです。実はできあがったものにはあんまり興味がなくて。できあがる前の作る過程が楽しいんです。
プログラミングは数学の理解に役立った
編集部:高校でロボコンに参加したときのことを教えてください。
田口さん:高2のときオンラインによる競技に参加しました。「
編集部:他にプログラミングが役に立ったという経験はありましたか?
田口さん:数学の理解に役立ったと思います。小学校のときにプログラミングをやり始めたので「関数」とか「変数」とかの概念が、先に頭に入ってきました。中学校で習って「あ、これ、C言語でやったやつじゃん」みたいな感じで、さらに数学が面白くなりました。また、中学のときにマインクラフトのレッドストーン回路(※3)を使って計算機を作りました。当時は論理回路とか全然知らなかったんですが、高校に上がって勉強したら全部自分で考えたことと一致してました。より理解が深まりましたね。
編集部:中学や高校でmicro:bitを使ったことはありましたか?
田口さん:中学のときの文化祭で、当時TVの「VS嵐」の中でやっていたゲームを再現しようという企画がありました。ゲームで使うある装置を電気的に動かさなければならなかったのですが、そのときに、当時普及し始めたmicro:bitを使いました。また高校の文化祭で小さい子対象のワークショップをmicro:bitでやったこともあります。micro:bitは環境構築も簡単で、LEDやセンサーも付いていて、初心者に扱いやすいマイコンだなとの印象を受けました。
父と母の役割
編集部:ご両親とはどんな関係だったんでしょうか?
田口さん:父は小学校のとき、電子工作やC言語の勉強にずいぶん協力してくれました。秋葉原にもよく連れてってくれましたし。そういう方向へ進んでほしいと思っていたんじゃないでしょうか。ただし強制されたことはありません。一緒に電子工作でよく遊んだという印象です。でも今はもうあんまり話はしないです。家のネットワーク環境の仕切りは自分なので、その相談くらいですかね。
母はよく有用な情報を見つけてきてくれました。
編集部:将来の夢はなんでしょうか?
田口さん:大学では、ソフトウエアとハードウエアの中間のところをやりたいと思っているので、ネットワークセキュリティを学ぶつもりです。具体的につきたい職業についてはまずは大学で学んでから考えたいと思っています。
編集部:田口さんが小学生でプログラミングに触れ、楽しみながら成長していったことがよくわかりました。本日はありがとうございました。
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<スペシャルコンテンツ お父様にも聞いてみました!>
編集部:小学生の頃、大哲さんはどんなお子さんでしたか?
田口淳一さん(以下淳一さん):次男の大哲は手先が器用でものづくりが大好きな子でした。ちょっと独創的なところが合って、積み木遊びをさせても、長男はきれいに積み上げていくのですが、斜めに積んで思いも寄らない形にするような子でした。遊びの延長のような形で電子工作を始めたのですが、子供3人の中ではまったのは大哲だけでしたね。
編集部:電子工作に興味をもった大哲さんにはどのように接していましたか?
淳一さん:ともかく一緒に作りました。「この道具を使えばこんなことができるんだよ」と目の前で見せたり。秋葉原にも連れて行って電子部品を買うところを見せたりしてました。自分も好きだったんで、「男の子はこういうものが好きなんだろう」と勝手に思ってましたね。
編集部:お父さまはエンジニアでもあるわけですが、大哲さんを見ていて、電子工作やプログラミングが成長に影響を与えたと思いますか?
淳一さん:プログラミングというとコンピュータの操作という方向にフォーカスされがちですが、それが子供の成長に影響するかといえば、どうでしょうか? ただ、ものを作ったり、プログラムを書いたりする過程の中で、「考える」力は相当鍛えられたんじゃないのかなと思います。
< 用語解説 >
(※1)C言語…1972年に開発されたプログラミング言語。汎用性が高く、プログラミングの実行速度が速いのが特徴。エンジニアに最もよく使われている言語といわれる
(※2)環境構築…コンピュータのシステムやソフトウエアの実行環境・開発環境を整えること。機材や回線、ソフトウエアなど、動作に必要な要素を手配し、実際に使用可能な状況まで整える作業を意味する。
(※3)レッドストーン回路…レッドストーンはマインクラフトの中に登場する素材。これで作った制御システムなどの回路のことを「レッドストーン回路」と呼ぶ。
次回もお楽しみに!