子供の好きを大切に 〜学習アプリを自分で作った小学生とそのご家庭〜

 

LABO  KIDS サロン 

プログラミング教育のこと、専門家の方にうかがいました。
 

第3回 子供の好きを大切に

〜学習アプリを自分で作った小学生とそのご家庭〜

 

「プログラミング教育って必要なの?」「家庭でできることってあるの?」家庭での子どもの教育に悩むお母さんやお父さんのかわりに、LABOKIDS編集部が専門家の方々にお話をお聞きする「LABOKIDSサロン」。

第3回は、数々のプログラミングコンテストで受賞歴を持つ愛知県名古屋市の小学5年生・川口明莉(かわぐちあかり)さんとお母さまの川口奈都子(かわぐちなつこ)さんです。

 

川口明莉(かわぐちあかり)さん

 

愛知県名古屋市に住む小学5年生(2021年現在)。小1からプログラミングに親しみ、小3でアプリ開発を行う。2020年、小4でCA Tech Kidsが開催する小学生プログラミングコンテスト「Tech Kids Grand Prix 2020」で優勝。2021年、小5で未踏ジュニアにもアイデアが採択された。父、母、弟の4人家族。母・奈都子さんは小学校のICT支援員。

 

LABOKIDS編集部&ライター金子氏で、リモートでお話を伺いました。

 

 

きっかけはNHK教育テレビ「Why!?プログラミング」

 

 

編集部:明莉さんがプログラミングやるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

 

川口明莉さん(以下明莉さん):1年生のとき、友だちにすすめられてNHK教育テレビ「Why!?プログラミング」(*1)を見たことです。番組に「Why!?大喜利」という毎月のお題にそった作品を視聴者が投稿するコーナーがあり、楽しそうだったので自分でも作品を作ってみたいと思いました。作品を作るためScratch*2)を覚えていくうちに、プログラミングにはまりました。でも最初の頃は投稿もなかなか採用されませんでした。最初に「Why!?大喜利」で取り上げられたときは、とてもうれしかったです。

 

編集部:1年生のときに始めたなんてすごいですね。プログラミングに出会う前に好きだったことはありますか?

 

明莉さん:幼稚園のときは、絵本を読んだり、何かを作ったりすることが好きでした。絵本は自分でも作ってみたいと思って、紙に自分で絵を描いて、文章を入れて作っていました。たいていは夢の中のお話で、最後のオチは「実は夢でした」というものです。本以外では、レゴブロックでいろいろなものを作ったりしていました。

幼稚園の時に作った絵本。絵も文字も明莉さんが書いています。

 

編集部:小学校に行く前から字も書けて、思っていることを文章にできてたんですね。プログラミングもすぐにできるようになったんですか?

 

明莉さん:1年生のときは、パパがやるScratchを横で見てた感じです。2年生から自分でも作るようになりました。3年生でUnity*3)をやり始めたときもパパと一緒でした。1年生の冬にはCoderDojo*4)にも通っていたので、わからないことがあればメンターさんに聞いたりもしてました。

 

編集部:そうして作った作品を、「Why!?大喜利」だけじゃなくて、いろいろなコンテストに応募していったんですね。

 

明莉さん:はい。

 

 

私のアプリで他の子が遊んでいるのを見るのも好き

 

 

編集部:プログラミングは1日のうち、いつやってるんですか?

 

明莉さん:朝、やることが多いです。いつも5時に起きて、学校へ行く8時までの間に、勉強したり、プログラミングしたりしています。夜寝る前も、習い事とかなければ2時間ぐらいやってます。土日は集中して作品を作ってます。

 

編集部:習い事もやってるんですか?

 

明莉さん:塾とピアノと英語をやってます。英語は毎日ですけど、オンラインで30分なのですぐ終わります。塾は週2、ピアノは週1です。あと、放課後の部活でバスケットとソフトボールを週1でやってます。

 

編集部:忙しいですね。そんな中でプログラミングを続けているのは、やっぱり楽しいからですか?

 

明莉さん:はい。作るのも楽しいですが、私が作ったアプリで他の子が遊んでいるのを見るのも好きです。「もっとこうすれば使いやすそう」とか、「こういう機能をつけるともっとおもしろくなるな」とかがわかるからです。

 

編集部:今まで作った作品の中で一番のお気に入りは何ですか?

 

明莉さん:う〜ん、いろいろ作ったので…。やっぱり一番がんばったのは、「マークみっけ!for SDGs」ですね。プログラミングコンテストでも優勝できたし…。

※実際のアプリの画面。「マークみっけ!for SDGs」は、明莉さんが作ったAIを活用した学習アプリ。商品等についたSDGsに関連するマークをタブレット端末のカメラで読み取ると、マークの解説やSDGsのどれに当たるかなどを判別し、図鑑に記録できる。

 

編集部:未踏ジュニア*5)でのマークみっけ!for SDGs」の発表(2021年11月3日)もよかったですね。ユーザーの立場に立って作っているのがすばらしいと思います。

 

明莉さん:ありがとうございます。

 

編集部:micro:bitを使った作品でレノボ・ジャパンのプログラミングコンテストに受賞していますよね?

 

明莉さん:はい。「たんたん!探検隊」というmicro:bitを使った棒倒しゲームを作りました。

 

「たんたん!探検隊」は、明莉さんに協力してもらい、こちらの記事で詳しく紹介しています。

 

 

編集部:これからやりたいこととか、将来の夢とかありますか?

 

明莉さん:未踏ジュニアの交流セッションとか、最近はいろいろな人の話を聞くようになって、将来やりたいことがころころ変わっています。今は、未踏ジュニアでお世話になったメンターさんみたいに、プログラミングでいろいろなものやサービスを作る人になれたらいいなあ、と思っています。

 

 

 

好きなことに出会う機会を増やしてあげたい

 

 

編集部:お母さまにお聞きします。明莉さんがプログラミングに興味を持ち始めたときは、どう対応されたのでしょうか? 

 

川口奈都子さん(お母さま。以下奈都子さん):特に何かをやるということはなかったですね。パパと2人で「Why!?プログラミング」の作品を楽しそうに作るのをそばで見ていただけです。でも、投稿が採用されてテレビに映ったときは、私もうれしかったです。

 

編集部:プログラミング教室に通わせるとか、教材を買い与えるとかはしなかったんでしょうか?

 

奈都子さん:小1の冬にCoderDojoに通い始めました。夫の知り合いがCoderDojoのメンターさんを紹介してくれたので。教材については明莉が幼稚園のときからレゴが好きだったので、サンタさんが「 Lego WeDo Resource Set*6)をプレゼントしてくれました。特にプログラミングという意識ではなく、ロボットを動かすためにやっていたようでした。同じ頃、「レゴに似てるね」といってMinecraft(マインクラフト)*7)もやるようになっていました。「Why!?プログラミング」でScratchをやるようになって、その後は自然にLEGO WeDoやMinecraftで遊ぶようになって、やがてCoderDojoに通って、という流れですね。親としては好きなことをやらせてたら、こうなったという感じでしょうか。

 

編集部:明莉さんはプログラミングだけじゃなくて、習い事や部活など、忙しい毎日を過ごされているように思うのですが、お母さまとしてはどのようなサポートをされているんでしょうか?

 

奈都子さん:特に何か手助けする、促すみたいなことはないですね。学校の勉強も、塾の宿題も、プログラミングも、私がまだ寝てるうちに早起きして、勝手にやってる感じです。ただピアノだけは「うるさいから朝はやめてちょうだい」と頼んでます。今では下の子も朝早起きして勉強でもプログラミングでも自主的にやっています。お姉ちゃんを見てるせいか、そういうもんだと思ってるみたいです。

 

編集部:お子さんたちは自主的に行動してる感じなんですね。子育てて大事にしてることとかありますか?

 

奈都子さん:子どもが楽しいと思ってやれること、好きなことに出会う機会を増やしてあげたいとは思ってきました。小さい頃から、ワークショップやイベントなど、楽しそうだなと思ったら家族で出かけていく感じでしたね。私自身がそういう催し物が好きっていうのもあるんですが。子どものためにおもしろそうな本を図書館で借りてきたり、一緒に「子ども新聞」(「読売KODOMO新聞」)を読んだりしてます。そうして知識の幅を広げて、好きなこと、興味のあることを見つけやすく、ということは意識しています。

 

編集部:お母さまは、何かお仕事はされているんでしょうか?

 

奈都子さん:実は子どもからの影響もあり、2021年の4月からICT支援員*8)をやっています。タブレットなど新しい機器に触れる子どもたちの助けになりたいという気持ちです。ちょうど子育ても一段落したところなのでいいタイミングかな、と思ったのもひとつです。それと明莉を見ていて、プログラミングとかは男の人が多い世界なのかなということに気がつきました。もっとプログラミングをする女の子が増えればいいな、というのは思っています。私がICT支援員をすることでその一助になれば、いいのですが。まだまだ実力不足なので、私自身も勉強しながら取り組んでいます。

 

編集部:お父さまは、プログラミングに関係するようなお仕事をされているんでしょうか?

 

奈都子さん:仕事でパソコンは使いますが、特にプログラミングが必要といったことはないですね。明莉が「Why!?プログラミング」でScratchに興味をもったときに一緒に始めた感じです。子どもと熱心に勉強しながら、楽しんでいました。

 

編集部:お話を伺っていると、ご家族が自然の流れで楽しみながらプログラミングに親しんできたことがよくわかります。特別な環境でなくても、明莉さんのように「好き」を見つけて伸ばしていける秘訣がそのあたりにあるのではないかと思いました。本日はありがとうございました。

 

< 用語解説 >

*1 Why!?プログラミング…NHK教育テレビで2016年3月から放送されているプログラミングについての人気番組。Scratchの世界に起きた問題をプログラミングで解決していく。主演はお笑い芸人でIT関連会社社長の「厚切りジェイソン」。

 

*2 Scratch(スクラッチ)…世界で最も普及している子ども向けプログラミングソフト。コード(コンピュータへの命令)がブロックにまとめられていて、ブロックを組み合わせることでプログラムが作れる。学校などでもよく使われている。

 

*3 Unity…ユニテイ・テクノロジーズ社が開発したゲーム開発プラットフォーム。「ゲームを作るためのツールキットがまとまっている。ゲーム自体を実行する環境が含まれているのが特徴。

 

*4 CoderDojo…7〜17歳の子どもを対象にしたプログラミング道場。2011年にアイルランドで始まり、世界では112カ国・2,200の道場、日本には237以上の道場がある。ScratchやPythonなどが学べるが、内容は各道場で異なる。

 

*5 未踏ジュニア…一般社団法人「未踏」が主催するデジタル技術を持つ17歳以下の人材を支援する事業。アイデアが採択されると作品完成までメンターの指導が受けられ、資金や機材等も提供される。

 

*6 Lego WeDo Resource Set…LEGOのロボットプログラミング教材。ブロックでロボットなどを作り、独自のビジュアルプログラミングソフトでプログラミングして動かす。

 

*7 Minecraft(マインクラフト)…3Dブロックで構成された仮想空間の中で、ものづくりや冒険が楽しめるゲーム。子供の思考力や創造力を養うのに役立つといわれている。

 

*8 ICT支援員…デジタル機器やソフトウェアの設定など、小中学校での先生のICT活用をサポートし、授業がスムーズに行われるよう支援する専門スタッフ。自治体や学校が直接的に、あるいは委託業者を通して、採用している。