第9回 金本優花さんインタビュー 「夫婦のコミュニケーションが子どもの学びに与える力」
プログラミング教育のこと、専門家の方にうかがいました。
「プログラミング教育って必要なの?」「家庭でできることってあるの?」家庭での子どもの教育に悩むお母さんやお父さんのかわりに、LABOKIDS編集部が専門家の方々にお話をお聞きする「LABOKIDSサロン」。
第9回は、株式会社スイッチサイエンスの取締役社長・金本茂さんの奥様・金本優花さんです。前回のご主人の話を踏まえ、子育てにおいての大切な価値観や教育方針、そして夫婦の協力体制について、お話いただきました。
第9回 金本優花さんインタビュー
「夫婦のコミュニケーションが子どもの学びに与える力」
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金本 優花(かねもと ゆか)さん
小学一年生の女の子、3歳の男の子を育てる二児のママ。教育系出版社で数々の教育系事業を担当してきたキャリアをもつ。
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親ができるのは子供のために環境を整えてやること
編集部:お子さまを育てる上で大切にされていることなど、教育方針について教えてください。
金本(優):我が家では、夫婦で子供たちのことについてとにかくよく話し合っています。教育方針は特に大それたものではなく、単純に「人に役立つ子に育ってほしい」という共通の想いがあります。人の役に立つ人になるためには、他者とのつながりを大切にし、思いやりの心を持つこと、つまり、人の気持ちを理解できる共感力がとても大切だと考えています。
この共感力を育むためには、さまざまな知識や経験が必要で、そのための環境づくりが親の大切な役割だと考えています。そのひとつの方法として、私立の小学校受験を選択しました。子供たちが新しい経験を通して成長し、それが共感力の向上につながればいいなと思っています。
「環境を整える」というところでは、何かに気づいたときや興味が湧いたとき、関連する本をすぐ手に取れるように心がけています。図鑑やサイエンス関連の書籍が多いです。とにかく、「本を読む」という経験が大切だと考えています。我が家には本棚からこぼれそうなぐらいたくさんの本があります。また、パソコンやタブレットなども常に目に届く場所に置いて、いつでも触れられるようにしています。
あと、これは教育方針というより我が家のスタンスですが、「笑顔で暮らす」というモットーがあります。人生にはいろいろあるけれども、「ニコニコ笑っていればなんとかなる」というのが夫の信条であり、私もそう思います。この「笑顔」の考え方の奥には、自分をどれだけコントロールできるかという要素があると思っているんです。自制心を持ち、自律した人間になってもらいたいですね。
夫婦の役割
編集部:教育について夫婦で役割分担とかありますか?
金本(優):我が家では、父親が「人生にはいろいろな可能性がある」「社会にはいろいろな仕事がある」といった選択肢を示す役割を担当し、一方で母親は子供が選んだ道を「応援する」役割を果たしています。
夫が頻繁に口にするのは、「今の社会は過去の人々が努力して築き上げた結果であり、現在も働く人たちがより良い社会を築こうと頑張っている成果だ。みんなが『世の中に貢献したい』という気持ちで成り立っている。これを子供に伝えたい。」との考えです。私も同様に感じています。たとえば、街中で救急車や消防車を見かけた時、「かっこいい」だけでなく、「なぜ急いでいるのかわかる?」から始まり、「こういう人が乗っていて、困っている人を助けているのだよ」といった話を積極的に子供に伝えています。
私は子供の味方となり、「好きなことを追求していいよ」「何かに興味をもったら応援するよ」「失敗しても戻ってきたらいいんだよ」といったスタンスで子供と接しています。
あと、日常的な役割分担でいうと、子供を連れて行く場所は夫婦で異なります。それぞれが得意な分野を担当することにしているんです。理由は子供が興味を持ったことに対してきちんと説明できるようにしたいからです。夫は博物館や科学館などが多いですね。一方で私はアートが好きなので、美術展やコンサートなど、感性や芸術に触れられる場所を担当しています。そうやって色々な経験を通じて、子供が幅広い興味を育むことができるように心がけています。
編集部:ご夫婦でいつの間にか考え方がずれるとか、そういうことはないんですか?
金本(優):教育方針については、一貫性を大切にしています。あるルールにおいて、お父さんが「いい」と言っていたのに対してお母さんが「ダメ」というような状況は、子供が混乱してしまいますよね。夫はその点でジャッジが厳しく、「こうした方が良かったね」といったアドバイスを頻繁にもらいます。時には手厳しいなと感じることもありますが、それでも言ってくれること自体が子育てに積極的に関わっている証拠であり、非常にありがたいと感じています。
続ける力が大切
編集部:CoderDojoに通われているそうですね。ご主人ではなく、優花さんが探してきたとお聞きしました。経緯を教えてください。
金本(優):プログラミングを学ぶことで、自然な流れで課題解決能力が身につくと感じます。これは世の中の役に立つために必要なスキルであり、その力を身につけることは重要だと考えています。それで夫に相談したんですが、夫はプログラミングに関する知識が豊富すぎてどの教室や教材が最適かを選ぶのが難しいようでした(笑)。そこで、私が情報を集めてCoderDojoにたどり着いたわけです。
いくつかのプログラミング教室を調査しましたが、どこも高額で尻込みしてしまいましたね。個別指導が必要なことは理解していますが、子供がプログラミングに本当に興味を持つかどうかはわからない段階で高額な料金を支払うのは勇気が要ります。その中で、CoderDojoは無料で提供されているので、気軽に試してみることができました。結果として、子供は興味を持ち、今は楽しく通っているので、良い選択だったと思います。
編集部:10月にビッグサイトで開催されたMaker Faire Tokyo 2023に、娘さんを連れていらっしゃいましたよね。私たちのブースにも来てくださって。娘さんにも、micro:bitを使った貯金箱やピンボールで遊んでもらいました。貯金箱はコインを入れると枚数が表示されます。「どうして数えられるの?」と聞かれたのでメカニズムを説明すると、入れたコインが赤外線センサーを通過するのを何度も何度も見ていました。
金本(優):えんえんとやっていましたね。なんだかしつこい性格で(笑)でも、そのしつこさが何か新しいことを学ぶときには、良い方向に向かえばいいなと思っています。例えば勉強なんかも、一番にならなくても、好きなら続けることができる。続ける力って、本当に大切だと思うんです。
編集部:商品としては、どう思われましたか?
金本(優):一般的なプログラミング教材は完成品で高価なイメージがありますが、micro:bitのキットは子供たちにとっても楽しそうで、価格も手ごろだと感じます。例えばピンボール工作キットはダンボール仕様なので、ペイントしたり、シールを貼ったり、自分でアレンジできる要素があるのも素晴らしいと思いました。
プログラミングはあくまでツール。土台作りも大事
編集部:プログラミング以外の習い事は何かされていますか?
金本(優):今までは特にはやらせてこなかったですね。水泳とか、英語とか、体操とか。1週間、習い事で埋める、みたいなことはありませんでした。送迎も大変ですし、土日はどこかに一緒に遊びに出かけたい。できるだけ子供と一緒にいる時間を大切にしたいという思いの方が強いです。
編集部:2020年度から小学校でもプログラミング教育が導入されましたが、お子さんの学校では特別に何かやっていたりしますか?
金本(優):うちの学校は特に目立った動きはありません。親としては、プログラミングはあくまでツールであるため、それよりもっと基本的な土台を築いてほしいという思いがあります。
英語もそうですね。以前、学校にオンライン英会話を導入する仕事をしていましたが、実際の現場では英語の成績が良い子供が必ずしもコミュニケーションが得意とは限らないことを知りました。英語は単なるツールであり、伝えたい気持ちやトライする気持ちが、何かを学ぶ上で重要であると感じました。
習い事などを早くから始めさせない理由も、そういった土台をゆっくりと構築していきたいという思いがあったからです。我が家では夫婦で積極的にそういったことを話し合い、小学校受験を選択したりしましたが、結局は受験することではなく、そのプロセスが子供を育てていく上でとても重要なことなんだと思いました。子供との関わり方について夫婦でじっくりと話し合うことは、どのご家庭でも大切な価値のあることだと思います。
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